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英語でのプレゼンテーションにおける心得7選

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英語のプレゼンテーション



と聞いてあなたは何を思い浮かべるだろうか?



私が真っ先に思い浮かべたのは,スティーブ・ジョブズである。
ジョブズのプレゼンにはカリスマ性があり,世界中の人々が魅了されたことだろう。
私もそのうちの1人である。iMacMacbook ProiPad Pro,iPhoneを所有しており,気づけばApple教の信者になっていた。

ジョブズのようなプレゼンをする機会はないだろうが,グローバル化が進む現代では英語でのプレゼンが求められることがあるだろう。
私自身,海外の先生に向けて研究成果を英語で説明したことが何度かある。
来年度は海外留学することが決まっているので,英語でプレゼンする機会は増えるだろう。


lpasteur.hatenablog.com


2012年時点の記事ではあるが,リーマンショックが起こった2008年以降に,一定以上の英語力を有するビジネスパーソンの需要が高まっていることがわかる。

https://doda.jp/guide/ranking/056.html

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グローバル採用の実態調査2012 (https://doda.jp/guide/ranking/056.htmlから引用)

徐々に人口が減っていく国内市場に目を向けていては利益は上がらないので,ますます英語が話せる人材のニーズは増えていくだろう。

理系であれば日本語でのプレゼンのイロハを研究室で習うことはあるだろうが,授業で基礎から学ぶことはない。
ましてや英語でのプレゼンとなると気が重くならないだろうか?
ありがたいことに,本学では博士学生向けに英語でのプレゼンを成功するためのスキルを磨く講義がある。
そもそもなぜ英語でプレゼンは難しいのか,プレゼン中やスライド作成において注意すべき点,役立つフレーズなどを習ったので情報共有する。

基礎的な注意点は日本語のプレゼンとも共通しているので,「英語でプレゼンなんてしないやい」という方にも参考になるはずだ。


その1: なぜ英語のプレゼンは難しいのか

プレゼンはスポーツに似ている。
大坂なおみだってラケットを握った瞬間に世界ランキング1位になったわけではない。
テニスの基礎を学び,辛い練習を乗り越え,試合中もメンタルをコントロールする術を身につけ心技体のスキルを身につけてきたはずだ。
プレゼンも同じでスライドを前にしたからといって,スラスラと話せるわけではない。
何度も練習を重ねなければプレゼンのスキルも上達はしない。
それにも関わらずプレゼンの訓練を受けたり練習を重ねる機会はほとんどないため,苦手意識を克服できず難しいと感じてしまうのだろう。

その2: 準備段階で気をつけること

聴衆のレベルや興味に合わせた発表をしなければならない。
研究室内でのゼミと,当該分野の一流研究者が集まるような国際学会と,専門外の研究者も出席しているような交流会では話す内容が変わってくる。

専門用語のオンパレードで,開始5分と持たずに置いていかれたプレゼン。
あるいは,知っている情報しか出てこなく期待外れのプレゼン。

みなさんは上記のような経験はないだろうか?
聴衆のバックグラウンドに適した発表を心がける必要がある。

その3: スライドのデザイン

ほとんどの人は10%の聴いたこと,20%の見たことしか覚えていない。
しかし,デザインに優れたスライドを使ったプレゼンを聴いた場合,記憶力は50%まで上昇する。

引用元 (Micheal Alley, The Craft of Scientific Presentations)

The Craft of Scientific Presentations: Critical Steps to Succeed and Critical Errors to Avoid

The Craft of Scientific Presentations: Critical Steps to Succeed and Critical Errors to Avoid

ここでいうデザインとは,スライドの見やすさのことである。スライドは見せるものであって,読ませるものではない。

  • ギチギチに情報を詰め込まない。1スライドに盛り込む情報量は,1分程度で説明する分量にする。
  • スライドに書いていないことは話さない。逆に,スライドに書いてあるのに話さない,というのも良くない。ただし,示した図表データの一部を説明する場合は問題ない。
  • スライドに書く文章は長くならないようにする。箇条書きにすると内容が把握しやすくなる。
  • スライドの背景色は部屋の明るさに合わせる。暗い部屋では背景を暗めに,明るい部屋では背景を白にする。部屋の照明を全て落とすことは稀なので,背景は白にするのが無難である。
  • 図中の背景色やグリッドラインは削除する。

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セリフ体とサンセリフ

その4: 発表中に気をつけること

プレゼンにおいて最も大事なことは聴衆を意識することである。

推敲と練習を重ねて本番でアガらないようにすることはもちろん大事だが,プレゼン中にも気をつけるべき点がいくつかある。

立ち振る舞い

体は聴衆に向けなければならない。
スライドが映し出されているスクリーンに話しかけるのはナンセンスである。
聴衆とアイコンタクトをとり,目でも語りかけるようにする。
また,プレゼン中は自然体でいるべきだ。
緊張からくる仕草,例えば唇を舐めたり頭を掻いたり,は無意識のうちにしてしまうが,これは聴衆の気を紛らわしてしまう。
ポケットに手を突っ込んだり,片足に体重をかけたり,というのもよくない。

レーザーポインターの使い方

レーザーポインターをグルグルと回す人をたまに見かける。
レーザーポインターは,レーザー "サイクリング" でもレーザー "ウェービング" でもない。
自分が話している箇所を指し示せばよい。
グルグル回されると気が散ってしまう。

発表時間を守る

プレゼンには時間制限が設けられており,その中でいかに自分のメッセージを伝えられるかが鍵になる。
ただし,プレゼンテーターが話したいことを好きなように話してしまっては情報量が多くなってしまい,聴衆を置いてきぼりにしてしまう。
伝えたいポイントはせいぜい2,3点に絞る必要がある。
残り時間が少なくなったからといって駆け足で話されても,聴衆は全ての情報をキャッチすることはできない。

最初と最後が肝心

いくら英語力に不安があるからといって,"I'm not good at English" なんて冒頭に言ってはいけない
聴衆のテンションは最初から下がってしまう。
聴衆の興味はプレゼンテーターの英語力ではなくプレゼンの内容である。
多少文法を間違えてしまったり,噛んだりしたからといってナーバスになる必要はない。
ミスを犯したときにテンパってしまうと負の連鎖に陥るだろう。

終わりよければ全て良し。
自分が思う100点のプレゼンができなかったとしても,自信を持って締めるべきである。

何事も最初と最後の印象は大事である。

その5: 書き言葉と話し言葉の違いを理解する

科学論文では

  • 短縮語 (I'mやWe'reなど)を使ってはいけない
  • 一文が短過ぎてはいけない
  • takeやmakeのような複数の意味を持つ動詞を使ってはいけない
  • 句動詞を使ってはいけない
  • 同じワードを繰り返し使ってはいけない

など,堅苦しい制限がいくつかある。

一方,プレゼンでは上記のルールは当てはまらない。
例えば,2007年のiPhoneを初めて発表したときのジョブズのプレゼンでは,
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というように,短い一文で構成されており,同じフレーズを何度も繰り返している。
また,伝えるべきメッセージは3つに絞られており,聴衆を置いてきぼりにしていない。

その6: タイトルスライドにも時間を割く

卒業論文修士論文の発表を聴いていると,「◯◯研の◯◯です。研究タイトルは◯◯です。」のように発表を始めるパターンが多い。
内部に向けた発表では問題ないが,学会のような外向きに発表の場合,スライド1枚目で所属・名前・タイトルだけしか言わないのはもの寂しい。

  • 挨拶 (Greeting)
  • 名前 (Name)
  • 所属 (Affiliation)
  • 研究分野 (Research Area)
  • 問題点 (Current Problems)
  • 目的 (Research Aims)

を手短に説明すれば,プレゼンテーターがこれから話す内容を聴衆は想像できる。

私の場合だったら,
Hi, everyone.
I’m NAME (first/family) and I'm in department of AFFILIATION.
My research focuses on isolation of previously uncultured nitrifying bacteria.
Knowledge on the physiology and biochemistry of nitrifying bacteria is important.
But, difficulty of isolating nitrifying bacteria limits our understanding of their physiological and genomic characteristics.
So, I established an improved cultivation strategy for isolating novel nitrifying bacteria.
といった感じだろうか。
この分量で約30秒程度である。
「そんなに時間を使うのか」と思ったかもしれないが,タイトルスライドで聴衆を引き込ませるためには適当な時間だ。

その7: スライドとスライドの繋がりを意識する

王道プレゼンの流れは

  • Greeting
  • Name•Affiliation
  • Outline
  • Background (Previous research, Problems, Aim of research)
  • Body (Methods and materials, Results, Discussion)
  • Ending (Summary, Future work, Acknowledgement)

という順序で進む。

ここで,"This is outline." とか "I'll explain the background of this study." という始まりでスライドを説明するのはオシャレじゃない。
以下のようなフレーズでこなれ感を出そう。

  • Let me first give you the outline.
  • OK, this slide summarizes the background to the study.
  • OK, let me explain the results.
  • Let me finish with the conclusions.

結果の図表を説明しようとする場合は,

(スライドを切り替える前)

  • In the next slide, I'll [explain/describe/show]...
  • The next slide shows...
  • Next, I'm going to [explain/describe/show you]...

(スライドを切り替えた後)

  • In this slide, I will [explain/describe/show]...
  • This slide shows...
  • Now, I'm going to [explain/describe/show you]...
  • Let me now show you...
  • You can see here a figure showing...

のようにスライド間を繋げると良い。

スライドとスライドを繋ぐワードを正しく使いこなすことができれば,聴衆の頭にはプレゼンが1つのストーリーとして入ってくる。





プレゼン中の立ち振る舞いにおける注意事項や汎用性の高いフレーズを紹介した。
この記事にまとめたことに極意が詰まっているわけでもないし,すべての事項を意識したからといってプレゼンがすぐに上手くなるわけもない。
発音や息継ぎ,イントネーション,間の取り方…他にも大事な要素はある。
スポーツと同じなので,練習すれば聴衆を惹き込むプレゼンができるようになる。

場数を踏むことができればいいのだが,プレゼンの機会は中々与えられるものではない。
したがって,1回のプレゼンでの経験値を高める必要がある。
原稿を作り,原稿を丸暗記し,本番では原稿を暗唱する,と体に型を染み込ませるのだ。
基礎を叩き込めば,そのうち慣れてアドリブを入れられる。
その領域に達したら時間調整も難しくなくなるだろう。

まずは練習あるのみ,基礎となる型を習得しなければならない。



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