Goro's blog

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【デンマーク留学】デンマークでの生活は?日本の研究室との違いは?

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こんにちは。バイオ系博士課程Goro (@BioDr_goro) です。

日本学術振興会 若手研究者海外挑戦プログラムに採択され,半年間デンマークで研究をしていました。
DC1の給与に加え,若手研究者海外挑戦プログラムから140万円 (渡航費別) が支給されたので,お金には困らずに生活できました。

どんなことを意識して申請書を書いたか,についてはこちらを参照してください。
lpasteur.hatenablog.com

この記事では,留学の経緯,デンマークでの生活,日本の研究室との違いについて述べていきます。

留学に行った経緯

理由は「今しかできないと思ったから」「トップジャーナルからアクセプトされるような質の高いデータが欲しいから」「今後のキャリアのため」です。
詳細は以前の記事をご参照ください。
lpasteur.hatenablog.com

まだ帰国して半年しか経っていないので,留学が長い目で見たときに,キャリアにどう影響するのかは正直わかりません。
なお,就活中「君は留学行っているし海外は平気そうだね」と留学経験そのものを評価してくださった面接官もいらっしゃいました。
ただし,留学は珍しいものではありませんし,留学自体は他の人と差別化できる強みにならないと思います。
ハードスキル (語学力や研究遂行能力) とソフトスキル (行動パターンや思考回路) に,どのような変化があったかを自覚し,言語化することが大事です。

デンマークでの生活

住居

学生寮に入れるのは8月からでした。
7月に渡航したので最初の1ヶ月間は,Airbnbから予約した家にお邪魔していました。

学生寮の選択肢として,ルームシェアタイプの寮 (家賃45,000円) かワンルームタイプの寮 (家賃88,000円) があったのですが,後者を選びました。
キッチンやバス,トイレといった水回りをシェアするのは生理的に受け付けられません…。
余計なことでストレスを溜めたくないですし。

88,000円には光熱費とインターネット料金が含まれています。
デンマークは消費税が25%もすることを考慮すると,良心的な価格だったと思います。

ワンルームタイプの寮に住んでいる」と留学先のラボメイトに話したところ,「君はラッキーだね!」と言われました。
デンマークの都市部は住宅不足が問題になっており,学生寮の入居希望者も多いようです。

研究室

毎週水曜日の9時から,進捗報告やジャーナルクラブをやっていました。私も1度発表しています。
コアタイムに関する決まりはありませんでしたが,9時には研究室に行き20–24時に帰っていました。
なぜそんなに帰りが遅かったかというと,現地ではテーマを4つ進行させていたからです。
とにかく必死だったので,日本にいたときよりも研究に没頭していました。
「半年間は本気で取り組む」と腹を括っていたので,ハードな生活に耐えられたのかもしれません。

気分転換

遊び相手がいない,母国が通じない,研究はハード,となかなかストレスが溜まる生活をしていました。
そこで,1人でもできるストレス解消していました。
大学のジムが5:00–23:00で空いていたので,早朝もしくは夜に通っていました。
また,趣味のロードバイクやカメラを楽しんでいました。
ロードバイクFacebookのMarketplaceで中古車を購入しました。
MarketplaceとはFacebook版メルカリです。日本では実装されていない機能になります。
カメラは日本から持って行きました。

日本の研究室とデンマークの研究環境の違い

私が所属している研究室,留学先の研究室の違いを表にまとめました。

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構成メンバー

私が所属する日本の研究室は博士進学率が比較的高い方だと思いますが,それでも主要なのは修士学生です。
一方で,留学先の主戦力,つまり論文生産層は博士学生・ポスドクになります。
彼らをサポートするのがシニア研究員とテクニシャンです。

シニア研究員とは,研究のスペシャリストです。
日本の大学の場合,ポスドク助教→講師→准教授→教授と,職位が上がっていくルートがほとんどだと思います。
教授の主な仕事は授業と研究室全体のマネジメントです。
一方シニア研究員は,自分の研究室こそ持たないものの,パーマネントとして研究をずっと続けていきます。
博士学生やポスドクは数年で入れ替わってしまいますが,シニア研究員は所属を変えません。
したがって,シニア研究員は過去の博士学生・ポスドクが確立した技術を蓄積し,次の世代へ伝えることができます。
日本の研究室の場合,学生が卒業すると同時に技術が途絶えてしまうこともあるでしょう (プロトコールは残しておきましょう)。
教授 = 総監督,シニア研究員 = 現場監督,のようなイメージでしょうか。

テクニシャンは研究室の雑用を引き受けてくれる方です。
私が知る限り,物品の購入,試薬の管理,実験機器の管理,組換え大腸菌の管理,学生実験の準備を担当していました。

シニア研究員やテクニシャンがいるからこそ,博士学生・ポスドクのパフォーマンスが最大限引き出されていると感じました。

学生居室・実験室の広さ

留学先の学生居室はとにかく広かったです。
20平米ほどの部屋を3人で使っていました。

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1人でこの「上下に移動する」広いデスクを使っていました。
そのときの気分に合わせて座って作業することも,立って作業することもできます。

実験室も広く,「密」を感じたことはありませんでした。

作業スペースが広いと効率は高くなりますね。

博士学生・ポスドクの扱い

欧米では,研究費から博士学生に対して給与が支払われます。
留学先の研究室での給与は,約35万円/月だと聞いています。
税金が高いとはいえ,日本とは待遇がだいぶ違いますね。
日本では,日本学術振興会 特別研究員 (学振) に採択されたとしても20万円/月です。

ポスドクの給与に関してはわからないため比較できません。

手取り額も大事ですが,どれだけ「自分の」研究に集中できるかも重要です。
研究環境に関しては,平均すると欧米の方が優れていると思います。

上述しましたが,日本の研究室は大多数が学部生・修士学生で構成されています。
彼らを指導し,卒業論文修士論文の面倒を見ているの誰でしょうか?

博士学生・ポスドクです。

もちろん教授も指導していますが,実験手技を教えたり,日々のコミュニケーションをとっているのは博士学生・ポスドクです。
当然,博士学生・ポスドクに「学生指導」という負担がのし掛かります。
もし学生指導を放棄してしまうと,研究室の治安が乱れ,研究環境も悪くなるでしょう。
したがって,学生指導を怠るわけにはいきません。

アカデミア,民間企業を問わず,学生指導の経験は活かされるので,学生指導の必要があること自体は悪ではありません。
問題は,学生指導によって本業である自分の研究が疎かになってしまうことです。

私の研究室は博士学生が多く,学生指導の負担が分散されているので,学生指導にストレスはあまり感じていません。
しかし,少ない博士学生・ポスドクに下級生の指導が集中している研究室もあるでしょう。

「給与」「研究に割ける時間」の観点で考えると,日本よりも欧米の方が博士学生・ポスドクの扱いは良いのではないでしょうか。

私は半年間しかデンマークの研究室に籍を置いていなかったので,欧米の負の側面が見えていなかったかもしれないことを断っておきます。
例えば,デンマーク人は7–8月に長い長い夏休みを取るので,研究室に来る人が減ります。
テクニシャンの方もほぼ2ヶ月いなかったので,なかなか実験を始められず,もどかしい思いをしました。
他にも欧米ならではの研究を進める上でのストレスがあるのかもしれません。

まとめ

  • 留学に行った理由は,「今しかできないと思ったから」「トップジャーナルからアクセプトされるような質の高いデータが欲しいから」「今後のキャリアのため」です。
  • 最初の1ヶ月間はAirbnbで見つけた部屋,残りの5ヶ月は大学の学生寮に住んでいました。学生寮の家賃は物価を考えると良心的。
  • 博士学生・ポスドクにとって日本よりも欧米の研究環境の方が優れていると感じました。


この記事が,研究留学を考えている方の参考になれば幸いです。