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【研究者を志望する動機、目指す研究者像、アピールポイント等】採択された学振申請書を公開

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バイオ系博士課程のGoro (@BioDr_goro) です。


この記事はこんな方にお勧め

  • 絶対に学振をとりたい
  • 【研究者を志望する動機、目指す研究者像、アピールポイント等】に何を書けばいいのかわからない


ありがたいことに,私は日本学術振興会 特別研究員 (DC1) に面接免除で採択されました。
毎年ゴールデンウィーク明けにヒィヒィ言わせている元凶,学振です。

この記事では,私がどんなことを考えながら学振申請書の【研究者を志望する動機、目指す研究者像、アピールポイント等】を書いたかを述べます。
なお,私が申請したときは,【自己評価】という項目でした。
当時とは記載すべき内容が少し変わっていること,ご了承ください。

【研究者を志望する動機、目指す研究者像、アピールポイント等】を侮ることなかれ

学振は数名の審査員によって,
①申請書から推量される研究者としての能力
②研究実績
③研究計画
④総合評価
の4項目について,5段階で評価されます。
総合評価は,①〜③の評価項目をもとに総合的に判断した相対評価です。

ロジックが通っていて読みやすいか?研究に独創性や新規性があるか?計画に無理はないか?などについて,
【現在までの研究状況】【これからの研究計画】がわかりやすく書かれていなければ採択はされません。

過去と未来の研究について分野外の審査員に理解してもらえることは重要ですが,
それと同じくらい【研究者を志望する動機、目指す研究者像、アピールポイント等】も大事な項目です。
恐らく,①申請書から推量される研究者としての能力,の評点に影響を与えています。

「一所懸命に申請書を書いてくれたのは伝わった。では,この申請者はどんな人なんだろうか?なぜ,この分野の研究に興味を持ったのか?」
と申請者の人物像を想像しながら読むのが最後のページです。
審査員に「応援したい」と納得してもらえるような文章を書きましょう。

私が書いた【自己評価】

自己評価の説明は以下です。

日本学術振興会特別研究員制度は、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に資することを目的としています。この目的に鑑み、申請者本人による自己評価を次の項目毎に記入してください。
① 研究職を志望する動機、目指す研究者像、自己の長所等
② 自己評価する上で、特に重要と思われる事項(特に優れた学業成績,受賞歴,飛び級入学,留学経験,特色ある学外活動など)

2020年以降,【研究者を志望する動機、目指す研究者像、アピールポイント等】という項目名に変更されています。

日本学術振興会特別研究員制度は、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に資することを目的としています。この目的に鑑み、研究者を志望する動機、目指す研究者像、アピールポイント等を記入してください。

と軽微な修正が加えられています。

アピールポイント = 自己の長所 + 業績・課外活動
という認識で問題ないでしょう。

「研究職」ではなく「研究者」という言葉が用いられていますが,深く考えなくていいと思います。
研究職ではなくとも,研究者としての道は歩めるので,より広義な意味を持つ「研究者」が使われるようになったのだと推察します。

1. 研究職を志望する動機、目指す研究者像、自己の長所等

【研究職を志望する動機】

申請者は幼少期より、地球の誕生と生物の進化について興味があり、生命の起源や神秘、我々の身体の仕組みに関する知識を身につけてきた。学部時代の講義では、1 µmスケールの細菌でさえ生きていく上で必要なシステムを全て有しており、我々はほんの一握りの機能しか理解できていないことを知った。一見単純に見える細菌で観察される現象を一つでも多く解き明かしたいと考え、○○を行ってきた。実際に研究に着手した際に、世界で自分だけが知っている真理を見出すことに面白さを感じた。今後の人生を研究に費やし、人類の叡智に基づく発展に貢献したいと考えたことが、申請者が研究職を志望する動機である。

身バレ防止のため研究テーマについては○○と置き換えました。

上記の流れでエントリーシートを書いたら基本的にアウトです。
エントリーシートでは結論の後にその理由を述べるのがセオリーだからです。

エントリーシートにおける志望動機のフレームワークに則って考えると,

  1. 結論 (○○という思いを達成することができるため,志望している)
  2. 理由 (○○を経験したため,研究者を目指すようになった)
  3. 目標 (研究を通して○○を成し遂げたい)

私の場合は,理由→結論の順番で書かれています。
学振でも結論→理由の順番で文章が構成されているほうが好まれるのではないでしょうか。

「研究者になりたい理由はなんですか?」と聞かれているのに,「幼少期では〜」と昔話をし始めたら,早く答えを教えてくれ!と思いますよね。
改めて,書き直した文章が以下になります。

研究者を志すようになったのは、知的好奇心を満たせること、また、世界初の発見によって人類の発展に貢献できることに楽しさを見出したからである。申請者は幼少期より、地球の誕生と生物の進化について興味があり、生命の起源や神秘、我々の精巧な身体の仕組み関して「なぜ?」と疑問を持ち続けてきた。そこで、大学では生命科学を幅広く学べる学科に進学した。学部時代の講義では、1 µmスケールの微生物でさえ生きていく上で必要なシステムを全て有しており、我々はほんの一握りの機能しか理解できていないことを知った。一見単純に見える微生物で観察される現象を一つでも多く解き明かしたいと考え、〇〇を行ってきた。実際に研究に着手した際に、世界で自分だけが知っている真理を発見できる快感は何物にも代えがたいと感じた。また、申請者は研究を通して微生物は食品や環境浄化といった幅広い分野で利用されていることを学んだ。食料問題や環境問題を微生物を利用したバイオテクノロジーで解決したく、研究職を目指している。

【目指す研究者像】

素人のように考え、玄人のように行動する研究者を目指している。事実は真実の敵となりうるため、先入観に捉われてはいけない。山中伸弥先生は、iPS細胞を樹立し、「分化した細胞が初期化する」という当時は誰も予想していなかった仮説を証明した。細胞の初期化因子を地道にスクリーニングする作業は大変な労力であったが、その先には常識を破る新発見が待っていた。公表された論文をそのまま鵜呑みにせず、教科書を書き換える気持ちで研究と向き合っていきたい。

こちらは結論ファーストで書かれていました。
私のように,誰もが知っている研究者をロールモデルとして挙げるのは1つの作戦だと思います。
【これからの研究計画】では,「教科書レベルで記載されている常識を打ち破る」ことを強調しました。
申請内容と目指す研究者像をさせるために,山中先生を引き合いに出したと記憶しています。

【自己の長所】

申請者は夢をひたむきに追い求め、また夢を実現するために必要なハードワークを厭わないことを自負している。研究に着手した当初は、〇〇技術の確立に苦戦し、〇〇ができなかった。しかしながら、一晩寝れば気持ちを切り替えられ、〇〇条件の最適化に力を注いだ。土日に研究室に来ることも多く、自分が納得できるまで実験を行ってきた。真摯に研究に向き合った結果、新規な〇〇手法を構築できた。このような貪欲な姿勢は研究者として成功するのに必要な資質であると考えている。また研究は一人の力では遂行できず、周囲の人々の助力があってこそ成り立つことを自覚しており、自分と関わる人への感謝の気持ちを決して忘れていない。

こちらも結論ファーストで書かれています。
就活サイトで自己分析し,「粘り強さ」や「ストイックさ」が私の1番の持ち味であるとわかりました。
博士を目指す学生であれば,過労死ラインを無視して研究に没頭する人が多いと思うので,研究にかけた時間をアピールするのは良くなかったかもしれません。
感謝の気持ちを述べたのは,論文の処女作を何度も添削してくださったからです。
ロジックが破綻した英語の文章が,国際誌にアクセプトされるまで洗練されたので,本当に感謝していました。
また,精神面・経済面で支えてもらっている友人や家族がいたからこそ,今の自分がいると思っています。

2. 自己評価する上で、特に重要と思われる事項

申請者は研究室に配属されて以降、世界の研究者と対等に渡り合うことができる研究者を目指し、研究活動に専念してきた。学部、修士課程の間に取り組んでいた「〇〇 (テーマ名)」に関して、〇〇 (学会名) において英語でのポスター発表を行い、〇〇の専門家である〇〇博士から「〇〇なので、この発見は学問の普遍性の面においてとても重要だ」と高い評価を得た。またこれまでの研究成果を筆頭著者としてまとめた論文が、○○学分野のトップジャーナルである○○誌に掲載された。一度リジェクトされてしまったが、原稿を何度も推敲し、追加実験を行うことで、最終的に目標の国際誌からアクセプトをいただいた。国際学会や論文投稿を通し、成果を高く評価されたことに確かな手応えと自身の成長を実感し、大きな自信を得るに至った。これは申請者が向上心を持って研究に取り組んできた結果であると考えている。
また申請者は勉学や研究以外でも高みを目指し、物事に全力で取り組んできた。己の弱さと向き合うレース競技において、自己ベストを更新することに達成感を見出し、常に過去の自分自身と戦ってきた。その結果、高校時代はボート競技において、2度にわたり国民体育大会の指定選手になり、東京都代表の選手として全国の猛者たちを相手に奮闘した。大学時代は、水上のみならず陸上でも達成感を味わいたいと考え、活躍の場所を自転車へ移した。自転車にテントや着替えを荷積みし、ツーリングしながら47都道府県すべてを走破した。雨にも負けず、風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けず、全国制覇したいという夢に向かって、学部生の長期休みを自転車に費やした。これまでに培った体力や精神力は研究を進めていく上で役立つだろう。自身を高めるための行動力と、興味のあることに対して真摯に全力で取り組む姿勢は、申請者の生き方を示すものと自己評価している。

【自己の長所】で書かれた内容を補助するエピソードを盛り込みました。
学業成績,受賞歴,留学経験があればそれをアピールするのが良いでしょう。
学部時代は学業よりもサークルに重きを置いていたので,研究以外で特筆すべき事項はありませんでした。

現在は,【アピールポイント】として【自己の長所】と【自己評価する上で、特に重要と思われる事項】がまとめられています。
以下のようなフレームワーク (結論→理由) で書いてみてはいかがでしょうか?

申請者は,○○であることを自負している。学部の卒業研究では,〜。このような成果を残せたのは,申請者が〇〇であるからだ。
また,研究以外の活動として〜。〇〇のエピソードも,研究者を目指す上で重要な資質であると考えている。

まとめ

  • 【研究者を志望する動機、目指す研究者像、アピールポイント等】も採択を左右する重要な項目だから手を抜かない
  • 結論→理由の順番で書くと読みやすい


学振は一人で思い詰めてはいけません。
採択への近道は,他の人の意見を取り入れて意見をもらうことだと思います。
【研究者を志望する動機、目指す研究者像、アピールポイント等】は文系でも読める箇所だと思うので,多くの人に読んでもらってフィードバックしてもらいましょう。

この記事を読んでいる方の採択を祈っております。