ご無沙汰しています。Goro (@BioDr_goro) です。
2021年3月に博士号を取得し,4月から民間企業の研究開発員として働いています。
さて,
実際,企業での研究開発ってどうなの?
って気になりませんか?
入社前,私は「アカデミアほど知的好奇心を満たしながら研究開発できない」だろうと予想していました。
結論から申し上げますと,学部4年〜博士3年の計6年間基礎研究をやってきた私でも,
十分満足しながら業務を遂行できています。
この記事では,1年間社会人として働き,
・民間企業での研究開発の実情
・学生時代と比べて研究に対する捉え方の変化
をお伝えします。
民間企業における研究開発の実情
研究開発のレベル
就職する前は,民間企業における研究開発のレベルはアカデミアよりも劣っている,と思っていました。
当時の思い込みは,正しくもあり,間違ってもいました。
企業は営利団体なので,純粋なサイエンスはできません。
なので,基礎研究のレベルはアカデミアの方が高いです。
学会に参加すると,アカデミアの方が新しい発想や知見に溢れているなと感じました。
一方,新技術の種を実用化する力は企業が優っています。
例えば,物質AからBへの変換速度が10の技術がアカデミアで見つかったとしたら,
その速度を20,30と伸ばしていく方法の研究開発・技術開発力は企業に軍配が上がります。
1日のスケジュール
今は1日のうち,50-80%は実験しています。
巷では,パワポエンジニアなんてワードを耳にしますが,私の場合は学生時代と同じくらい実験しています。
ただし,年次が上がるにつれて,実験は派遣社員・パート社員に任せ,デスクワーク中心になっていきます。
知的好奇心は満たせる
利益を上げることが目的なので,アカデミアレベルのサイエンスはできません。
ただし,気になった結果の深掘りはある程度できます。
理論解明は製品・装置の更なる改良に役立ちますし,理論に基づく新技術の説明は客先のウケも良いです。
良い結果も,悪い結果も,なぜそのようになったか考えているときは楽しいですね。
研究に対する捉え方の変化
出口思考が強くなった
学生時代は,自分の興味に突き動かされて研究をしていました。
企業に入ってからは,利益を上げるためにすべきこと何か,を最優先に考えるようになりました。
テーマを進めていく中で,興味を持つポイントがあったら深掘りする,というスタイルに変わりました。
目標
→解決方策
→具体的な方法
→方法を開発する上での課題抽出
→やるべき実験項目の設定
というように,トップダウンでやることが決まる傾向が強いです。
例えば,「あるシステムにおける年間薬品使用量50%削減」が目標なら,
解決方策は現状とは全く違うシステムを導入 (ハード面の改良) や,
現行のまま薬品使用量の最適化 (ソフト面の改良) が挙げられます。
ソフト面の改良なら,どんなデータが有ればいいのか,そのデータはどうやって取得するのか,を次に考えます。
一方で,「この研究開発ネタは面白そう!実用化してみたい!」というボトムアップ型の提案も可能です。
シーズから市場マーケットを考え,競合他社情報やリスク,必要な技術を整理し,中長期の研究開発テーマとして遂行することもあります。
コスト意識
どんなに新規性が高くて,良いものだとしても,コストメリットが出せないと売れません。
コストの内訳を整理し,どこなら削減できそうか,どうやっても実用化はできないのか,を考えるようになりました。
まとめ
- 純粋なサイエンスはできないが,民間企業でも知的好奇心を満たしながら研究開発できる
- 顧客や市場ニーズから逆算し,トップダウン式でテーマや実験項目を設定するようになった
- 興味ある新技術を実用化したい,という情熱に基づき中長期研究開発テーマとして提案できる
※分野や企業によって,研究開発のスタイルは違うはずなので,あくまで私の意見であることをご了承ください。